修理して使うアンティーク照明①〜「修理」についての認識は案外ユーザーと作り手では違う?〜

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修理して使うアンティーク照明①〜「修理」についての認識は案外ユーザーと作り手では違う?〜

修理して使うアンティーク照明②〜アンティーク修理特有の問題〜

修理して使うアンティーク照明③〜アンティーク再生のコダワリを共有する〜

「ランプシェード 張り替え」「ランプシェード 修理」などの検索で、弊社ブログにたどり着いたというお客様が多く、最近は修理のご依頼も多くなってきました。そんな中で、「ランプシェードの修理」という概念そのものに関する認識に、案外、依頼主のお客様と我々作り手とで違いがあるのかもしれないと思うようになりました。
もし、ご依頼前に読んで頂ければ、この認識のズレによる修理の依頼内容の齟齬や混乱がお互いに解消できるかもしれないと思い、この記事を書いてみました。

我々作り手にとっての修理とは

我々作り手にとって修理とは基本的に「不良パーツを新品パーツに交換する」ということです。
この点がお客さんにとっては意外なのかもしれませんが、これが基本です。
この基本に関して少し詳しく、また若干の(かなりの?)私見を交えて書いてみたいと思います。
個人的には照明器具に限らず工業製品一般に当て嵌まることだと思っています。

「昔のランプシェードは修理しながら長く使うことを前提として作られているが、現代のランプシェードは使い捨てを前提としている」

現行のランプシェードに対して、特にアンティークファンや古い製品の愛好者の間でまことしやかに言われていることですが、ある意味で真実ですが、ある意味では誤解があります。
どの辺りが誤解なのか。
ズバリ「今も昔も高級品は修理しながら長く使うが、廉価品は使い捨てられる。」
もちろん廉価品でも大事に長く使われることはありますが、傾向としては高級品ほど大事に使われることが多いと思います。
その傾向に応えるべく高級品は耐用年数も長めに設計されています。
つまりある程度修理を前提に作られている訳です、昔も、今も、です。
故障の程度によって一概には言えないのですが、高級品ほど購入費に対して修理費が安くなるケースが多いのは当然ですが、工作費だけに限定すれば、もしかすると絶対的な値段も安いかもしれません。
そして、低価格での修理を可能にしているのがパーツのユニット化です。

パーツのユニット化

製品をより小さな製品の集合として設計することで、不具合の出た箇所の特定と交換を容易にします。
ランプシェードに限らず、実用品の工業製品は長期にわたって安定している箇所と故障しやすい箇所があります。
可動部分や構造的・素材的に消耗しやすい箇所など、不具合の出やすい部分がどうしても出てしまいますから、よく考えられた製品はそのような弱点となりやすい箇所を出来るだけ集約して交換頻度を上げたりもします。そうすることで、「一箇所直したらまた別の箇所が壊れた」というような事態をかなり回避することができ、ユーザーの負担や不便やストレスを軽減します。
これはある意味で使い捨てですが、上のようなメリットを考えればむしろ設計上の進化と言えると思います。
耐用年数もユニットごとに設計されますから、耐用年数の短いユニットには無駄に頑丈な素材は使いません。ここに合理的な理由で廉価な素材が使われていることを指して「最近の製品は高級品も手を抜かれている」と言う批判は、作り手の感覚では的外れに感じることもあります。
ただ、ユーザーがそのように製品を厳しい目でチェックすることはモノづくり全体の質の向上にはとても大事なことです。
むしろ、昔より複雑な設計で製品を作るようになった作り手側が、自分の作ったものにきちんと説得力のある説明が必要になってきたと言うことだと思います。

対して廉価品はユニット化がなされていない、または全体が単一ユニットです。
故障への対処は「買い替え」が一番合理的です(ここまで言ってしまえる製品は我々作り手から言わせれば粗悪品も含まれますが、このような選択肢があるというのも現代の市場の進化の一つ。是非、ユーザー様でメリット・デメリットを吟味して上手に利用して欲しいと思います。)。

そして、このような現代製品においては修理とは基本的に「不良パーツ(ユニット)を新品パーツ(ユニット)に交換する」ことになるわけです。

長々と書きましたが、ここまでは前置きです。
今回のテーマは「アンティーク照明の修理」です。
が、少し長くなってきましたので、次回に続きます。