修理して使うアンティーク照明②〜アンティーク修理特有の問題〜

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修理して使うアンティーク照明①〜「修理」についての認識は案外ユーザーと作り手では違う?〜

修理して使うアンティーク照明②〜アンティーク修理特有の問題〜

修理して使うアンティーク照明③〜アンティーク再生のコダワリを共有する〜

ランプシェードの張り替えは修理ではない

ここでさらに断っておかなくてはならないことがあります。
紙や布で張られたシェードの張り替えについてです。
これらの笠の張り替えは我々笠屋にとっては修理ではありません。
紙や布で張られた笠は金属製や木製の枠やスタンド等と比べて極端に耐用年数の短い、いわば消耗品に近い部分です。
シェードに使われている紙や布は一般的な衣類等と比べて、劣化が早い傾向がありますが、これは至近距離の光源からの紫外線をもろに浴びているためです。
これに関しては現行品もアンティークも同様で、最初からクタビレてきたら交換することを前提としている部分です。
(ユニットというには大袈裟で、むしろ障子の張り替えと似ています。)
ですので、構造的に張り替えが出来ないような極端な廉価品を除いて、張り替えは(それがアンティークであっても)笠屋にとっては商品の一種です。

よって、ここでいう修理とは、シェードの張り替えとは別の、枠やスタンド、あるいはソケットやスイッチや配線等の電気系統の故障・破損・老朽化の修復、または張り替えの効かない金属製やガラス・陶器製のシェードの修復の事とします。

アンティーク照明の修理は新品パーツの入手がカギ

前回記事で書いた様に、修理とは基本的に「不良パーツを新品パーツに交換する」ことです。
この基本はアンティーク照明の修理においても第一選択です。
まずは交換すべき新品パーツが手に入るかどうかで修理の可否が決まります。

現行製品はメーカーによるパーツの供給によって、ある意味で、修理の可能性が保証されていると言えると思います。

それに対して、アンティークはパーツの入手が期待できるとは限りません。
つまり、修理可能であると誰も保証できないということです。

アンティークでも量産品であれば、新品パーツの入手の可能性はあります。
メーカーが純正パーツをまだ作っていたり、ストックしていることもありますし、同製品の別個体からパーツ取りすることもできます。

ですが、これが案外困難です。

多くのアンティークは
メーカー不明、
すでに製造メーカーが存在しない、
メーカーのパーツ保有期限切れ、
等、純正パーツが入手困難であることも多いです。

パーツ取りに関してはさらに困難です。
(パーツ取り用の製品は基本的には依頼主様にお持込み頂くことになりますが)
そもそも同製品が見つからない、
見つかったが程度が悪い、
良程度の同製品は高額だし、これ買うならもう買い替えで良いじゃん?
等々、条件が揃わないと難しいのが実情です。

また、古い製品は高級品といえども個体差が大きくパーツに互換性がないくらい差があることもよくあります。
量産品であっても、そのパーツの精度は現代のものとは比較にならないほど低く、組み立てる職人の技量に依存する割合が大きかったのです。
(これは個人的な想像なのですが、そもそも組み立て時に職人によって一点一点高精度に擦り合わせながら組んでいくことを前提にしているため、オートメーションで作る段階のパーツにそれほどの精度を求めていなかったのかもしれません。実際、組み上がった製品をバラしてみると、パーツの擦り合わせの精度は、うっかりすると現代の製品以上のこともあります。)
そのため、単にパーツを見つけるだけでなく、そのパーツが製品にフィットするかも大きな問題です。
それがパーツ取りによって入手したパーツとなると、既に擦り合わせの加工がされているため、一層難しくなることもあります。

様々なハードルをクリアしてようやく手に入れたパーツを不良パーツと交換する。
時間も、時にはお金も、現行品の修理以上に掛かってしまいますが、それでも一番低コストな選択だと思います。
上で述べた通り、現行品の修理と違い、擦り合わせの工作は必要になるかもしれませんが、「不良パーツを新品パーツに交換する」ことができれば修理は完了です。

先ほど、パーツ交換が第一選択だ、と申しましたが、我々作り手にとって「修理」とはこれが全てになります。

もちろん、アンティークの修理依頼に対して、他の対応策もありますが、この「パーツの交換」以外の対応策は、我々にとって「修理」ではなく、「オーダーメイド」、「カスタムメイド」、「新規製作」の範疇になってしまうのです。
これが、「修理」についての認識がユーザーと作り手では違うと感じる点になります。

ですが、依頼主様にとっては原状復帰や機能回復はやはり「修理依頼」ということになると思います。
実際、一点物や小ロットのハンドメイド品など、そもそも「純正パーツ」と言う概念がない製品に関しても修理依頼はありますし、お受けすることもあります。

しかし実際の作業は不良箇所の「製作」となります。

それらの実情を踏まえてこの連載に限ってですが、これより先の作業は「修理」ではなく「再生」と呼びたいと思います。

アンティーク照明再生のジレンマ

アンティークにおいても高級品の方が長く使えます。
アンティークの中でも比較的新しい製品であれば、ユニット化のようなメンテナンス性の高い構造になっていたりもしますが、アンティークの高級品は、現行品とはまた違う方向に手が掛かっていたりします。
方向性は主に二つです。
一つは単純に頑丈で加工のしやすい金属パーツ(鉄や真鍮)の多用により堅牢性が高く、また、構成するパーツの精度が高い。
二つ目はより細かく多数のパーツで構成されており、そもそも分解可能に設計されている。
(「単純な構造のものほど壊れにくい」というのは良く言われることで真実でもあるんですが、「単純な構造のものはいざ壊れた時の再生は大掛かり」ともなるので、なんとも・・・)
一つ目に関しては様々な素材の加工技術の進化によって、機能・実用性の復元だけを目指すのであればあまり意味がなくなってきていますが、二つ目は現代の再生においても決定的に有効です。
と、言うのも、分解不可能な接着や嵌め殺しはパーツの再生に恐ろしくコストが嵩む要因になるからです。

現代でもアンティークとして現役で使われている製品の多くは当時としても高級品だったものが多いです。
弊社に再生に持ち込まれるアンティーク照明もよくできた高級品が多いです。
ですが、あくまでも「多い」というだけで、古い物を大切に使いたいという気持ちには高級品も中級品も廉価品も関係ありません。
(人によっては気持ちというより習慣なのかもしれません。壊れたら買い換える前に取り敢えず修理の可能性を探るという。)
ところが、長く使うことを前提に作られている高級品と違い、中級品・廉価品はある程度割り切って作られています。
その割り切りは、素材だけでなく構造にも反映し、不良箇所を切り出すことが難しくなります。
そのため、再生の範囲が広くなり、結果、価格も高額になってしまうということが珍しくないのです。

アンティークは安価な製品でも再生費用は安いとは限らない。
この点が、アンティーク製品再生の悩ましい要素の一つではないでしょうか。

もう一つのアンティーク再生の難点がユーザーのコダワリです。
アンティークの魅力は「古さ」なのですが、この「古さ」の楽しみ方も人によって多種多様です。
・現代では見かけない様な外観や装飾を好む人
・傷、痛み、劣化を含めた経年変化を好む人
・オリジナルの状態に拘る人
・積極的にカスタムする人
・コレクション的に美品状態を保ちたい人
・実用品としてガンガン使う人
etc…。

当然、再生に対する要求も多様になってきます。

再生の依頼主がアンティークにどの様なコダワリがあるのか。
そして、再生には何を要求するのか。
それによって再生内容は大きく変わってきます。

この様に多様な要求に対してどの様な選択肢があり、どれを選択すべきなのか?
次回は、いくつかのモデルケースを挙げる事で、この問題を考えてみたいと思います。

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