辰巳堂 清水印刷さんに遊びに行ってきました

辰巳堂 清水印刷有限会社 一笠百業

弊社switchの名刺を始めとした各種書類から、時にインクジェットのシェード製作まで、およそ印刷に関する業務の殆どをお願いしている「印刷屋」さんの「辰巳堂 清水印刷有限会社」さんに遊びに行ってきました。
社長の清水省吾さんとは同級生ということもあって、公私ともに仲良くさせてもらっています。
そんな清水社長は名刺一つお願いしても自ら届けにきてくれるので、いつも恐縮しているのですが、その辺のことも含めて普段から気になっていたことなど、色々とお話を伺ってきました。

自ら配達に行く訳は

早速、お聞きしたのが、「どうして名刺一組の注文でわざわざ持ってきてくれるのか?」ということ。
実は、これは清水社長の営業戦略だと密かに思っていました。
なぜなら、私が実際、少しの注文でも自ら配達してくれる社長に、ある種ほだされたと言いますか、普段仕事しながらも、何か清水社長にお願いできるものはないかと探しているようなところがあるからなのです。
ところが、この点は一笑に否定されました。
社長の答えは、「お得意先の仕事場の環境を見に行くことで、何か提案できる印刷物がないかを探していた」のだそうです。
実際、多くの職場には印刷物が溢れています。
複写伝票等の各種伝票、名刺、封筒、カレンダー、カタログ、パンフレット・・・etc・・・。
そのような職場に於いて、新しく提案できそうなものはないか、改善した方が良さそうなものはないか、配達に行くことで探しているそうです。

高性能なカラープリンターの普及した今日、印刷屋さんのお仕事は変わってきているのでしょうか。
若干聞きづらい部分ではあったのですが、思い切って聞いてみました。
「確かに印刷屋は減ってきているが、技術的な変化というよりは単に景気の影響だと思う。」
現に印刷の仕事内容に大きな変化があったわけではないようです。
案外紙というものは嵩張るものです。
特に日常業務の中で出る膨大な資料や伝票の類は保管しておこうと思うと、あっという間に棚がいっぱいになります。
かと言って、デジタルに残そうと思うと、必ずしもデジタルデータとして集められるとは限らないため、入力の手間は馬鹿になりません。
そんな時に保管に適した薄い用紙にも綺麗に印刷できる印刷屋さんというのは、日常業務のテンプレート化された書式の紙こそ需要があるのだと言います。
また、単に印刷というだけでなく、封筒やカレンダー、パンフレットなど、紙の複合的な加工製品などはやはり手間やスピード、仕上がりなどを考えると社内で賄うよりも専門の印刷屋さんに発注した方が生産性が高いと、多くの企業は考えているようです。

むしろ、技術的な進歩は印刷業界にこそあるようです。
かつて印刷の原稿は、活字写植や刷版といった、原稿を作る専門の職人がいたそうです(刷版は現在でもあり、印刷に於いて重要な工程を担っている)が、現代では主に元原稿はデジタルデータでやり取りされるようになり、工程の精度やスピード感はかなり向上してきているようです。
そんな中で、ものづくりに携わる者としてやっぱり気になるのは、職人の技術。
印刷屋さんにとって核となる技術とは何なのか?
清水社長の答えは「”色”だろう」と。

印刷屋さんの技術的なキモは”色”

特に色に厳しい絵画や写真の印刷のときにこの違いが効いてきます。
これは皆さん実感として納得しやすいところではないでしょうか。
例えばパソコンで作ったカラーイラスト入りの葉書などを印刷しても、パソコンで見ていた色と微妙に(時に大きく)発色が違うことはよくあると思います。
まあそんな物だろうと気にしないで済ませてしまうんだと思うんですが、あれをきっちりと狙った色を出そうと思うとその難しさがわかると思います。

色に関しては二つ要素があるそうです。
一つは色の同定。
もう一つが色の再現。

まず一つめの「色の同定」。
パソコンやテレビなどのディスプレイは発色のための装置ですが、それでもメーカーやモデルによって同じデータを表示しても厳密には色が異なります。
元原稿を作った人が実際にディスプレイ上でどのような色を見ていたのか、どのような色を意図していたのかを同定しなくてはなりません。
これに関しては「色校」さんという専門家がいるそうですが、それでもその過程で試し刷りをしてアタリを出さなくてはなりません。

そこで大事になるのがもう一つの「色の再現」です。

普段あまり気にしない”色”という物?ですが、”色”という実体があるわけではなく、反射光という光を見てその光の波長の違いを”色”として認識しているわけですが、色えんぴつや絵の具などのように色そのものを着ける道具があるせいで直感的には”色”そのものがあるような気がしてしまいますよね。
しかし、色えんぴつや絵の具は、画用紙という専用のカンバスに絵を描くための画材で、木のテーブルに描いたり、黒板に描いたりすれば、下の色や素材感を透過してしまい、本来の狙った色は出ないはずです。
印刷も同様です。
印刷に使うインクの配合、印刷する素材との組み合わせ、それぞれを調整して元原稿作成者の意図した色を素材上に再現しなくてはなりません。
ここで、いち早く「アタリ」を出すのが熟練の職人の勘です。
「勘」と言ってしまうと何だか心許ない印象を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、「職人の勘」というのは(無粋な説明で申し訳ありません)、普段の生活ではありえないような膨大な数の「同じ仕事」の繰り返しの中で培われる一種の経験知と言いますか、判断力のことです。
一気に問題点にフォーカスし、瞬時に解決策を見つけ出す”勘”こそが仕事のスピード、延いては仕事を仕事として成立させる能力の大きな要素になっています。
清水印刷さんの職人さんの色の勘に対して、清水社長も信頼を置いていることが伺えました。
実際、この色の”アタリ”を早く出すことができれば、それだけ試し刷りの回数も減り、コストも抑えられ、スピードも向上するのですから当然ですね。

実は四代目だったことが発覚!

清水社長とは普段から仲良くさせてもらっていることは先ほど書きましたが、私は清水省吾社長は三代目だと伺っていたのですが(多分本人もそう思っていたはず)、今回遊びに行った事務所に社長のお母様がいらっしゃって、お話をする中で、どうやら曽祖父から続く四代目の社長だったということが発覚しました。
現在、清水印刷さんは印刷屋さんのメッカ・江東区の門前仲町にあるのですが、元々は八丁堀で戦前から開業していたそうで(あれ?京橋だっけ?)、話をしてる中で、どうも計算が合わないなと思っていたので、むしろスッキリしました。
辰巳堂 清水印刷有限会社
辰巳堂 清水印刷有限会社
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辰巳堂 清水印刷有限会社
辰巳堂 清水印刷有限会社
辰巳堂 清水印刷有限会社
歴史ある家業を守って、打ち込んで、盛り立てている友人を見て、私も共に頑張ろうと思ったり・・・思わなかったり・・・思ったり。

突然押し掛けたにも関わらず、快く迎えてくれた清水印刷さん、ありがとうございました!
また遊びに行きます。